[連載第6回 2015年 12月号]
ドイツワインを愛するみなさまへ
大阪ではスカイビルで、恒例のクリスマス・マーケットも始まりました。
いよいよワインが最も楽しまれる季節の到来ですね!
この季節は特に毎日いろいろな人に会うのですが、よくあるのが、
展示会などで話しかけられて、「この人誰やったかな??」という場面。
話している間に思い出すこともあれば、結局全く思い出せず
申し訳ない気持ちでいっぱいになり、
「誰やったんやろ、誰やったんやろ??」と
気になってしょうがなくなることもしばしば。。。
40歳を過ぎ、どちらかというと後者が増えてきたように思います。。。
最近それではさすがにまずい!!と思い、名刺を見返したり、
何か関連付けて覚えたりして、せっかくのご縁を損なうことのないように
心がけているのですが、万が一私にお声掛け頂き、
ちょっとおどおどした感じになったら、どうかご容赦くださいませ。
さて、そんな話とは全く関係なく、今回も少し長めに
お気に入りのワインについて書かせていただきます。
月に一度のことですので、どうぞ最後までお付き合い頂けると幸いです^^;
上の写真のワインは、今年の夏に初来日してくれた
ファルツ地域の、ライナー醸造所のものです。
ムカデは描かれてるわ、黒いしみのようなものがあるわで
エチケットはモダンではありますが、
決して好評を博していないこのエチケット。
かわいそうに、あるお店さんからは「カビが生えている」
と、いわれてしまったこのエチケット。。。
実は、ふか~い話があるのです。
上の写真の、現当主スヴェン・ライナー君(34歳)が
醸造所を継いだのは2000年、まだ彼が19歳の頃でした。
お父様のご病気で突然実家へ戻ることとなったのですが、
元料理人だったお父さんが経営していた小規模ワイナリーは
まだその半分以上を地元の協同組合に卸しているような状態で、
知名度は全くありませんでした。
ドイツの名門醸造所を渡り歩いたスヴェン君は引き継ぐなり、
自然に優しい農法を行いながら、醸造所の基本デザイン自体も一新し、
今や押しも押されぬドイツの若手醸造家の最注目株となりました。
その当時ドイツではあまり見ない斬新なオレンジ色を使用した
虫のデザイン付きエチケットは、彼の友人であるデザイナーさんとの
長い話し合いの中で生まれました。
自らの手と自然との調和によってできるものがワインであり、
そのシンボルとして自分の手形と畑で一緒に働いてくれる
益虫をあしらっています。
(注:ワインによってあしらわれてる益虫が異なります)
今回ご紹介するグラウアーブルグンダーには、
なんとムカデが描かれています!?
グロテスクなイメージの虫ですが、
畑の害虫を駆除してくれる益虫なのだとか。
夏に来日した際、スヴェン君に
山野:「なんで蝶とかトンボにせえへんねん!!
グラウアーブルグンダーって灰色なんやから
せめてカミキリムシとかあるやろう!?」
と文句を言っていたのですが、
ライナー君:「ムカデのエチケットなんてみたことないやろ?
どこにもないワインだからこういう風にしたかったんや」
とのことでした。
ムカデが描かれているだけでもインパクト十分なのですが、
2010年はスヴェン君にとっては特別な年でした。
上記の写真を見て下さい!
2010年7月9日に写真の2ユーロ硬貨よりも大きな雹(ひょう)の被害に見舞われ、
彼のグラウアーブルグンダーの畑は60%が収穫不能となりました。
わずか15分の間だけだったそうです。。。
私もドイツにいた時、何度か体験したことがあるのですが、
本当に写真のように大きな雹がガラガラと音を立てて落ちてくるので
すぐに頑丈な屋根の上に隠れないとけがをします。
このままでは単一の品種として世に出すこともできない、、、
と苦悩していた彼に手を差し伸べてくれたのが、近隣の醸造家仲間。
同じく自然に優しい農法を行っている友人より、
グラウアーブルグンダーを譲り受け、
なんとか作り上げたのがこのワインです。
雹害(ひょうがい)というとあまり聞こえはよくないですが、
こういった年は収穫量が落ち、残ったブドウは非常に濃厚に育ちます。
こちらのグラウアーブルグンダーも5年以上の熟成を経て
ピノ・グリ独特の旨みとコクが出たこれからの季節にぴったりの
重厚な味わいになってきました!
畑はアルザスのボージュ山脈より続くファルツの森のすぐ麓の南向けの丘、
ハイスビュールという畑。黄土、粘土に覆われた日当たりのよい丘なので、
果実味がしっかりと出て、ピノ・グリにぴったりの畑です。
【右奥に見える山脈がファルツの森、その手前に広がる畑がハイスビュール】
最近私、週に1~2回、大阪スカイビル1Fのクリスマスマーケットに立って
ワインの販売していますが、このワインが、なかなか好評です!
店番をしていて、いろいろな方が差し入れをしてくれるので、
チーズやおかきなんかをつまみながらちびちびとやっていると
このワインの試飲ボトルの減るのが早いこと早いこと。。。^^;
クリスマスに、年末年始とワインを飲む機会が多いこの時期、
大きな試練を乗り越えて日本にやって来たこちらのワイン、
是非ともお試しください♪
2010 Handwerk Grauerburgunder / Weingut Leiner / Pfalz
ハンドヴェルク グラウアーブルグンダー
/ヴァイングート・ライナー /ファルツ 本体価格 2,800円(税別)
期せずして2回連続ピノ・グリのご案内となってしまいました。
おかげさまで前回のラッツェンベルガーさんのピノ・グリは
残りわずかとなりました。ありがとうございました!
最後までお付き合いいただきまして、ありがとうございました!
皆様にとって素敵な年末年始になることを、心よりお祈りいたしております。